「ホームページ(ウェブサイト)のリニューアルを考えているのですが、動画を入れた方がいいでしょうか?」
最近、クライアントである経営者や担当者の方から、このような相談を受ける機会が急増しました。私の答えは常にイエスです。むしろ、「入れない理由が見当たらない」とさえ申し上げます。
かつて、ホームページにおける動画は、大企業だけが許された「贅沢品」でした。通信速度が遅く、サーバーの容量も限られていた時代、動画はサイトを重くする厄介者だったのです。しかし、5G通信が当たり前となり、誰もがスマートフォンでYouTubeやTikTokを日常的に視聴する現代において、動画はもはやオプションではなく、事業成長のための「必須インフラ」へと進化しました。
文字と写真だけの静的なホームページは、いわば「カタログ」です。情報を伝えることはできますが、感情を動かすことは苦手です。一方、動画を実装したホームページは「体験」を提供します。
今回は、なぜ今、ホームページに動画を追加することが、集客と採用という企業の二大課題を解決する鍵となるのか。その理由を、マーケティングのプロとしての視点と、技術的な実装のポイントを交えて、徹底的に解説します。
「1分の動画」が持つ圧倒的な情報伝達力
マーケティングの世界でよく引用されるデータに、「1分間の動画が伝える情報量は、文字に換算すると180万語、Webページにすると3,600ページ分に相当する」という説があります。
これは決して大袈裟な話ではありません。例えば、自社の新製品の使いやすさをアピールしたいとします。「人間工学に基づいたグリップで、驚くほど手に馴染みます」と文章で書くよりも、実際にユーザーが製品を握り、笑顔を見せる数秒のカットを見せる方が、直感的にその価値は伝わります。
テキストを読むという行為は、脳にとって能動的な負荷がかかる作業です。ユーザーは「読もう」と努力しなければ情報を得られません。対して動画は、受動的に「見る」だけで、視覚と聴覚の両方から情報が流れ込んできます。
特に、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若年層にとって、情報は「読むもの」ではなく「見るもの」です。彼らが何かを知りたい時、最初に開くのはGoogleの検索窓ではなく、YouTubeやInstagram、TikTokの検索窓かもしれません。
彼らにとって、文字だけで構成されたページは「不親切」あるいは「古臭い」と映る可能性があります。ホームページに動画があることは、それだけで「この企業は現代のコミュニケーションスタイルを理解している」というメッセージになり、信頼感の醸成につながるのです。
集客力を加速させる「滞在時間」というマジック
動画の導入は、SEO(検索エンジン最適化)の観点からも極めて有効な戦略です。
Googleの検索アルゴリズムは、ユーザーがそのページにどれだけ長く留まったか(滞在時間)を、ページの品質を判断する重要な指標の一つとしています。
テキストだけのページでは、斜め読みされて数秒で離脱されてしまうことも珍しくありません。しかし、ファーストビュー(ページを開いて最初に見える部分)に魅力的な動画があれば、ユーザーは思わず手を止めて見入ってしまいます。
数秒の興味が、数十秒の視聴に変わり、結果としてページ滞在時間が大幅に延びます。Googleはこれを「ユーザーにとって価値のあるコンテンツが含まれている」と判断し、検索順位を押し上げる要因となります。
さらに、YouTubeにアップロードした動画をホームページに埋め込むことで、Googleの「動画検索」からの流入も見込めるようになります。これは、通常のキーワード検索とは別の入り口を増やすことを意味し、競合他社がまだ手をつけていない領域での集客が可能になります。
コンバージョン(成果)への最後の一押し
集客ができても、最終的な問い合わせや購入(コンバージョン)につながらなければ意味がありません。動画は、この「最後の一押し」において最強の武器となります。
BtoB(法人向け)の商材や、高額なサービスの場合、顧客は失敗を恐れます。「本当に効果があるのか?」「使いこなせるのか?」「担当者は信頼できるのか?」といった不安が、申し込みボタンを押す指を止めさせます。
ここで効果を発揮するのが、「お客様の声」や「デモンストレーション」の動画です。
実際に導入して成功した企業の担当者が語るインタビュー動画は、どんなに巧みなセールスコピーよりも説得力があります。また、無形のサービス(コンサルティングやシステム開発など)の場合、担当者がカメラに向かって情熱を語る動画は、対面営業に近い安心感を与えます。
「顔が見える」ということは、インターネットという非対面の空間において、最大の信頼保証になります。動画によって不安を払拭されたユーザーは、迷いなくコンバージョンへと進んでいきます。
採用活動における「ミスマッチ」を根絶する
ここまでは集客の話でしたが、実は動画の効果が最も顕著に現れるのは「採用活動」の現場です。
求人票に書かれた「アットホームな職場です」「風通しの良い社風です」という言葉ほど、求職者に響かないものはありません。どの会社も同じことを書いているからです。
しかし、動画であれば「嘘」はつけません。
オフィスの執務スペースを歩き回り、社員同士が談笑している様子、真剣に議論している様子、ランチタイムの風景。これらをありのままに映し出した「オフィスツアー動画」や「社員の1日」といったコンテンツは、文字情報の何倍もの解像度で企業の空気感を伝えます。
求職者が最も知りたいのは、給与や待遇の先にある「そこで働く自分の姿」です。動画を通じてそのイメージを具体化させることで、「思っていたのと違った」という入社後のミスマッチを防ぐことができます。
また、代表者からのメッセージ動画も強力です。社長がどんなビジョンを持ち、どんな熱量で語るのか。その姿に共感して応募してくる人材は、定着率も高く、将来のコアメンバーになり得る素質を持っています。
採用サイトに動画があるだけで、エントリーの質が明らかに変わります。それは、「なんとなく」応募してくる層を減らし、「この会社で働きたい」という強い意志を持った層を引き寄せるフィルターの役割も果たすからです。
実装におけるプロの流儀:重くしない、邪魔しない
動画が有効だからといって、何も考えずに巨大な動画ファイルをトップページに貼り付けるのは危険です。ページの読み込み速度が低下し、ユーザーが待ちきれずに離脱してしまうからです。これはCore Web Vitals(コアウェブバイタル)というGoogleの指標にも悪影響を与えます。
私たちプロが動画を実装する場合、いくつかの技術的な最適化を行います。
まず、動画ファイルそのものをサーバーに置くのではなく、YouTubeやVimeoといった外部の動画配信プラットフォームを利用し、それを埋め込む形をとるのが一般的です。これにより、自社サーバーへの負荷を軽減し、ストリーミング技術によってスムーズな再生を実現します。
また、トップページの背景として動画を流す場合は、画質をあえて少し落とし、音声を削除し、数秒のループ再生にするなどして、徹底的な軽量化を図ります。
さらに重要なのが「ユーザー体験(UX)」への配慮です。
ページを開いた瞬間に大音量で動画が再生される仕様は、ユーザーにとって迷惑以外の何物でもありません。特に電車の中や静かなオフィスで見ている人にとっては、即座にページを閉じる理由になります。
動画は基本的に「音声オフ(ミュート)」で自動再生を開始するか、ユーザーが再生ボタンを押した時だけ再生されるように設定するのが鉄則です。また、動画の内容が理解できるように、字幕(テロップ)を入れることも必須です。多くのユーザーは、スマホをマナーモードにしたまま動画を視聴するからです。
動画の寿命と鮮度管理
動画制作にはコストと時間がかかります。そのため、一度作ったら何年もそのまま使い回したくなる気持ちはわかります。
しかし、ホームページ(ウェブサイト)上の動画にも「賞味期限」があります。
動画に映り込んでいる社員がすでに退職していたり、服装や髪型が今の時代とズレていたり、オフィスのレイアウトが変わっていたりすると、敏感なユーザーは「この会社、情報が古いな」と感じ取ります。
特に採用動画においては、鮮度が命です。3年前の動画を見せられても、今の会社の姿とは乖離があるでしょう。
プロの視点から提案したいのは、最初から「更新しやすい動画」を作ることです。
例えば、大掛かりな会社紹介ビデオを一本ドカンと作るのではなく、部署ごとのインタビュー動画や、プロジェクト紹介動画など、短尺のコンテンツを複数用意します。これなら、状況が変わった部分だけを差し替えることができます。
また、最近ではTikTokやInstagramのリール動画のような、スマホで撮影した縦型ショート動画をホームページに埋め込む手法も増えています。これなら、プロの機材がなくても、社内のスタッフが日常的に撮影し、鮮度の高い情報を発信し続けることができます。
まとめ:動画は事業のストーリーを語るための最強のツール
ホームページに動画を追加することは、単なる装飾ではありません。それは、静的だったWebサイトに「時間軸」と「感情」を吹き込む行為です。
テキストで論理を伝え、動画で感情を動かす。このハイブリッドな構成こそが、これからのWebスタンダードになります。
「うちの会社には見せられるようなものがない」と謙遜される方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。社員が真面目に働く姿、商品が作られる工程、お客様と向き合う真摯な表情。それらすべてが、御社だけの貴重なコンテンツであり、ストーリーです。
そのストーリーを、動画という力を借りて、正しく世界に届けてください。それが、結果として集客の数字を変え、採用の質を変え、事業全体のステージを一段階引き上げることにつながります。
まずは、スマートフォンで撮影した短い動画を一つ、ページに載せてみることから始めてみませんか。その小さな「動き」が、御社のホームページに大きな変化をもたらすはずです。
電子音楽制作とウェブサイト制作(ホームページ制作) たまに楽器
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